韓国ソウル市の広告景観における賑わい感の評価
金 明煥、佐藤 優
A Study on the sense of Liveliness of Signscape in Seoul, Korea
KIM Myoung hwan & SATO Masaru
受理 2014/09/06、採用決定 2015/02/19【建築・環境デザイン】
要約
屋外広告物は、商業施設が集まる都心の繁華街などにおいて、地域にふさわしい賑わい感(Liveliness) を演出する媒体としての役割を担う。それらの地域では、人々が好感を抱く賑わい感のある広告景観を形成するための誘導施策の展開が求められる。本研究では、屋外広告物を中心にした店舗ファサードのデザイン要素についての調査とシミュレーション画像による印象評価実験を通して、活気溢れる賑わい感のある広告景観のあり方について検討する。
韓国ソウル市でもっとも良好な広告景観を保っていると言われる地域3ヶ所の店舗ファサードを対象に、人々が「悪いと思う」ものと「良いと思う」ものを、28人によるフィールドサーベイを通して計198 個収集した。そして、フィールドサーベイの参加者による投票を経て、その中からワースト10とベスト10を選定した。それらの事例における店舗ファサードのデザイン要素を調べるとともに、ワースト10とベスト10の比較を通して、人々が好感を抱く要因を導出した(予備調査)。次に、それらの要因を適用したシミュレーション画像を作成し、広告景観における好感度と賑わい感の変化を検討するための印象評価実験を行った(本調査1)。また、店舗ファサードの複雑度と広告景観の印象が関連すると考えたので、店舗ファサードを装うデザイン要素の増減が好感度と賑わい感に与える影響を確認した(本調査2)。
これらの調査を通して、⑴単調なデザインの建物外装を「良いと思う」傾向があることが把握できた。また、⑵開口部が広く、外部空間が設けられ、遊動設置物を積極的に配置した店舗の構えを好み、⑶屋外広告物に関しては、数、量、色彩を含めたその他の要素を最小限にするなど、さまざまな項目において単純で明瞭なデザインコンセプトをもつものを「良いと思う」ことが確認できた。⑷ 印象評価実験を通して、好感度と賑わい感の相関が認められ、特に「良いと思う」ものでは、人々が好感を抱く要因を取り入れることによって、好感度も賑わい感も高めることができる。また、⑸ 賑わい感を失わずに人々が好感をもつ広告景観を創出していくためには、店舗ファサードの複雑度をコントロールすることが有効であるなどの基礎的な知見を得た。