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論文/テンションを変化させた平織りのシミュレーション

テンションを変化させた平織りのシミュレーション

-平織りにおける経糸と緯糸の伸縮を用いた
三次元構造を形成するアルゴリズムの構築-

大内克哉、小山明、渡邉操、小茂田靖子

受付:2019.7.27 , 採用:2019.10.7

要約

本稿では経糸と緯糸からなる平織りを考え、それぞれの糸が伸縮することにより形成される構造を決定する数理モデルを提案した。ここでの基本的な目的は、織物を交点の集合として捉え、各交点の運動を記述する局所的なダイナミクスを導入することにより、全体的な形状が自発的に形成されるメカニズムを明らかにすることである。 個々の交点はそれに隣接する交点から糸の伸縮によるテンションを受けることによって、強散逸の条件の下での運動方程式に従うものとしてそのダイナミクスを構築している。糸の伸縮に伴うテンションは、今回は理想化することによりある決められた長さまで距離に比例するような簡単な場合を考えることとし、最終的にポテンシャル系に対する常微分方程式からなる数理モデルに帰着した。得られた微分方程式系をコンピュータを用いて数値的に積分することにより、全ての交点の位置が時間とともにどのように移動するかを決定している。また、交点の数に応じて、織物の形状が確定するのにどれくらいの計算時間が必要かを見積もった。その結果、交点の数の3/2乗に比例することを明らかにしている。更に、糸の伸縮によって形成される織物の三次元立体構造を決定するアルゴリズムを、各交点における局所的なダイナミクスから構築することを試みた。個々の糸は、本来決められた収縮率までしか縮まないはずであるが、今回提案したシミュレーションでは、対象としている交点の周りにある糸の収縮率の配置によってそれ以上縮む場合がある。設定以上に伸縮した場合、それが三次元的な皺を形成するものとして、三次元立体構造を形成するアルゴリズムを提案している。



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Last-modified: 2020-04-10 (金) 10:59:24