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論文/キルンワークにおけるガラスの熔解表現に関する実験研究

キルンワークにおけるガラスの
熔解表現に関する実験研究

ー中空立体造形制作における糊の比較実験

加藤 千佳

Experimental research on liquefaction expressions of glass in kiln work
ーComparative experiment of adhesive glue in hollow three-dimensional modeling production
KATO Chika
(受付:2020/3/18 採用:2020/9/22 )

要約

 本研究は、ガラス素材の表現の幅を広げるための技法の開発を目的としている。現代の「工芸」とよばれる分野の評価基準は明確ではない。造形の自由によって、「用の美」だけでなく、「鑑賞の美」が評価される現代の「工芸」の中で、ガラス工芸の分野における、技法開発を行うことで、表現の幅を広げることができると考えている。本研究は、ガラス工芸の技法の中で、窯を使用し造形表現を行うキルンワークでガラスの中空立体形状を実現させるために糊の実験を行ったものである。
 実験方法は、60mmの球体ガラスを88個制作し、その結果を考察した。糊は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、モデリンググラス(購入先ロペックスインターナショナル株式会社)、木工用ボンド/家庭用(小西株式会社)、重曹(レック株式会社)の4種類を使用した。分量によっても変化があると推測し、5段階もしくは6段階実験を行った。また、ガラスは焼成温度の違いでも、大きく変化がある。そのため、今回の実験では、フュージング技法の温度帯の中で低温度680℃、低温度と高温度の中間温度740℃、フュージング技法とキャスティング技法の中間温度800℃、キャスティング技法の温度860℃の4段階の温度帯で実験を行った。 
 実験の結果は、88個中43個において、生じた穴の面積が表面積が、1%未満に収まる中空立体形状が実現した。穴の総面積を10%まで許容すると62個実現した。成功率が高かった糊の種類は、カルボキシメチルセルロース(CMC)と木工用ボンドであった。木工用ボンドは、焼成糊の分量、温度関係なく成功個数が最も多く、表面積10%以上、37.5%未満、表面積が37.5%以上または形状が保たれていないものが0個であったことから、木工用ボンドが最も中空立体形状の成功率が高いことがいえる。また、結果からモデリンググラスと重曹は中空立体形状に適さない糊であることがわかった。この実験から、カルボキシメチルセルロース(CMC)と木工用ボンドを糊として使用することによって、中空立体形状は実現できるといえる結果となった。吹きガラスで作るような空気層を封印する空洞形状はできないもの、若干の穴を許せば、それに準じた立体形状を作ることは可能であることがこの実験でわかった。




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Last-modified: 2020-09-23 (水) 10:48:47