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報告/デザイン教育におけるICTの活用と教育効果

デザイン教育におけるICTの活用と教育効果

ー 新潟工科大学におけるパッケージデザイン演習を事例にして

黒木 宏一、倉知 徹

Utilization of ICT and Educational Effect in Design Education
A Case Study of the Package Design Exercise at Niigata Institute of Technology
Hirokazu KUROGI, Tohru KURACHI
(受付:2020/07/20 採用:2020/12/14)


要約

 ICTの実践や研究は各分野で盛んに行われているものの、ICTを活用したデザイン教育という視点に立った研究は、黎明期の段階にある。本稿は、筆者が取り組んだ、ICTを活用した工学系デザイン教育の実践を事例に挙げ、デザインの質を高めるためのICTを活用した教育方法を検討、教育効果を検証したものである。
 本稿では、1節でデザイン教育とICTの活用に関する研究の方向性、2節で研究の方法、3節で、デザイン授業の問題点とICT環境の工夫について、4節で、段階的にデザインスキルを高める演習課題(課題①トレース、課題②名刺のデザイン、課題③パッケージデザイン)の3段回の課題設定の狙いについて、5節で、教育に活用したICT環境(e-portfolioとタブレットアプリ)の効果について、6節で、この授業で制作された作品の類型化、優秀な作品の課題①から課題③までのデザインスキルの変化と教育方法の関連性、7節で、デザイン教育とICT環境の効果の構造について論述している。
 段階的なデザインスキル向上の課題設定については、課題①では、学生に取り組みやすい身近なもののトレースを行うことで、DTPソフトの特殊な操作の体得を促し、課題②では、名刺のデザインにおいて、紙面全体のレイアウトに関する技術の体得、課題③のパッケージデザインにおいて、デザインワークにおける基本的な流れ、デザインリサーチ、構想、スケッチ、デザインとして落とし込む、と言った一連の体得を目指した。ICT環境の整備については、70人規模の受講する学生のきめ細やかな作品チェック方法や、講評の手法、学生相互の作品確認など、学生の全体的なデザインスキルアップのためのICT活用のポイントをまとめている。また、多様な発想・着想のデザインが生まれていること、デザインスキルの変化として、デザインスキルの高い学生はもとより、スキルの低い学生でも段階的に技術を伸ばしている。ICT環境を活用したデザイン教育の枠組み、次のステップに向かわせるループとその要点にも言及している。
 結論として、デザイン教育において、特に受講者数の多い授業に関して、ICT環境を活用した教育が有効であること、また、学生作品のきめ細かな把握、学生相互の学びの機会の獲得、学生の主体性やモチベーションを高める効果があった。




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Last-modified: 2020-12-21 (月) 13:24:54