#author("2017-06-13T19:51:22+09:00","default:sdafst","sdafst")
*神戸洋家具産業の発祥過程と産業化の特徴
***〜開港期から明治中期〜
***佐野浩三
The Characteristics of the Origination Process and the Industrialization in the Kobe Western-Style Furniture Industry
From the latter Edo-Period (Opening of the Japanese Ports) until the Middle Term in Meiji-Period
SANO Hirozo
受理:2016/9/29, 採用決定:2016/11/25【プロダクトデザイン】
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***要約
神戸洋家具産業は、慶応3(1868)年の兵庫(神戸)開港にはじまる居留地や雑居地での実用的需要を契機とした日本の洋家具産業として発祥した。同様に安政6(1859)年に開港した横浜も市井にある人々の活動の現場から洋家具産業が生まれた経緯を持っている。一方、開港地での実用的需要を契機とする系譜に対して、「東京芝家具」は明治政府の政治的需要によって成立した洋家具産業の中心的系譜とされるが、黎明期の職人は技術習得のために横浜や神戸、長崎に出向いており、先端の製作技術は開港地に存在していた。
神戸洋家具産業の発祥には、船大工系と道具商系の二つの系統 があり、外国人からの修理依頼や不要品の再生販売を通して製作技術や室内装飾の知識を身につけ西洋家具の事業者に発展した。本論ではこれらの洋家具製造業者が誕生する「発祥期」を研究対象として、今まで公に知られていなかった神戸洋家具産業発祥時の事業者の実態調査を行い、明治初期に先駆者となる人々やそれに続く明治10 年代以降の初期参入者が洋家具を事業とする経緯を調査分析した。
本論では、当時の複数の出版物の照査から、製造を業態に含む先駆者3 件と初期参入者6 件の事業者、非製造業の初期参入者2 件の存在を特定した。「発祥期」の段階では地域産業としての定着に至る過渡期にあるが、製造、請負、小売などの業態が既に生じていることから、産業の基礎的な枠組みが形成されつつあることが確認できる。今回の調査で既知の情報以上の事業者数や業態が判明し、早い時期から多様な動きがあったことが明らかになった。
本論の目的は、先駆者が洋家具を事業化する経緯(事業化経緯:問題の把握から、工夫・展開を経て解決案を形として表す一連の発想の過程を継続的な経済活動とする経緯)を明らかにすることである。その「発祥期」の結論として、(1)外国人の要請に先駆者が手持ちの能力から着想し、(2)試行錯誤による模倣製作や再生販売で解決策となる成果を導き、(3)評価を反映させた能力の高次化を図り信頼を獲得することで、(4)稼業としての職能化に至る流れを「神戸洋家具産業の発祥期における事業化経緯の概念図」にまとめ提示した。
今後の展開は今期以降の事業化経緯の変化を比較検証することを最終のねらいとしている。
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