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論文/函館市青柳町・宝来町における一棟二戸の形態的特徴 の変更点


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*函館市青柳町・宝来町における一棟二戸の形態的特徴
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*函館市青柳町・宝来町における&br;一棟二戸の形態的特徴
***金子晋也
A Study on Characteristics of Semi-detached House in Aoyagicho and Houraicho Hakodate
KANEKO Shinya
(受付:2020/09/02 採用:2021/02/20)
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***要約
 函館は、洋風建築や和洋折衷の町家などによる異国情緒ある町並みが特徴としてとらえられてきた地域である。これに対し、本研究は、市内に多くみられる1棟の建物を2戸に分割した住居形式(一棟二戸)の変容に着目し、その形態的特徴とバリエーションを明らかにすることで、庶民の生活の場から函館の地域性を評価する視点を得ることを目的とするものである。

 一棟二戸は、昭和9年の函館の大火の復興計画以降に小規模な土地所有者により建設された住居形式であり、旧市街地の西部や郊外の住宅地である東部に広くみられる。建設された立地によっても形態が異なることから、本研究では歴史的、地理的に多様性が把握できる地区として青柳町と宝来町を対象としている。研究対象は、現地での外観観察調査を通じて確認した連続住宅116棟から、過去の住宅地図と照合し、現在も一棟二戸であることが確認でき、生活の形跡のある63棟を対象事例として抽出した。分析では、一棟二戸の伝統的な構成や要素に対する形態的差異に着目し、屋根形からみたボリュームの形態的特徴(4章)と、出入口と開口部廻りの差異からみた外観の特徴(5章)により分類した。さらに、ボリュームと外観の分類の組合せから一棟二戸のパターンを整理し、対象地区における分布を把握した(6章)。

 分析の結果、63棟の形態的特徴は、寄棟屋根や切妻屋根の伝統型(38事例:60%)と変形屋根や陸屋根など非伝統型(25事例:40%)に分類され、非伝統型では出入口や開口部廻りに差異がある割合が高いことが明らかとなった(18/25事例:72%)。また、類似するパターンが局所的に集まるエリアが確認でき、庶民の生活の場が多様に展開する様子が把握できた。さらに、計画的に配された幅広の直線状の街路との関係から、アドホックな乱雑さと整然さが対比する都市のイメージが把握できた。

 本研究でみた分類指標は、函館市内の他地区に現存する一棟二戸にも共通する形態的特徴であり、今後は減築事例や複数戸の連続住宅と合わせて整理することで、函館の住文化の地域的・通時的特徴が整理できると思われる。また、本研究で得た一棟二戸のパターンは、函館の都市のイメージを考察する上での知見を提示したといえる。
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