A Study on the analysis method of brand components using 3 × 3 matrix for employer brands
Kae Ikeda, KIYOSUMI Masahiro
エンプロイヤー・ブランド(Employer Brand=以下、EBと記す)とは、企業の従業員や求職者向けのブランドイメージの構成方法であり、製品づくりに関する一貫性をアピールするProduct Brand(=以下、PBと記す)や、顧客向けの企業イメージを戦略的に構築するCorporate Brand(=以下、CBと記す)と並んで、企業にとって重要なイメージ構築の考え方である。PBやCBは、企業の外向きの一貫性のあるイメージを確立する方法として早くから注目されてきたが、企業の内向きの情報も重要であるとするEBが注目されるようになってきたのは最近になってからである。
本研究では、企業がEBを導入し、確立しやすくすることを目的とし、EBの概念をわかりやすく構造化し、企業が体系的に導入できるようにする方法を提示する。
本研究は、3×3ブランドマトリクスを提案した。提案の方法は下記の流れで行った。①ブランド構成要素の抽出で、ブランドを成立させる構成要素を抽出、階層化する際に、ブランドとブランドが示す対象にとどまらず、ブランドを受信する生活者の解釈をブランドの構成要素に含めた。②パースの記号論に基づくブランド構成要素の階層化で、パースの記号論における、記号そのもの、記号が示す対象、解釈志向の三項構造を応用し、ブランドを成立させる構成要素を3×3のマトリクスに階層化した。③CB、PB、EBの構成要素で重視される要素の比較で、PB、CB、EBの区別が明確ではないため、3×3ブランド構成要素分析法=3×3ブランドマトリクスを使い、各ブランド構成要素の中で重視される要素の関係をアンケート調査により明らかにし、PB、EB、CBで重視される要素でPB3×3表、EB3×3表、CB3×3表を作った。④一企業を例とした3×3ブランドマトリクスによるブランド分析可能性の検討で、個別ブランドの具体的事例を3×3ブランドマトリクスとEB3×3表にあてはめることで、個別ブランドの分析が可能であることを検証した。
本分析手法の研究により、3×3ブランドマトリクスとEB3×3表が個別企業ブランドの体系的な解釈に役立つことがわかった。