-丸の内仲通りの社会実験で見られた滞留行為の多様性
三友奈々
Various Time-Spending Acts by Pedestrians in Flexible Squares
Nana Mitsutomo
(受付:2020/4/17 採用:2020/9/11)
本研究で扱う研究対象地は、東京都千代田区大丸有地区丸の内仲通りの車道上に設置された仮設の広場空間とする。本研究対象地は、そもそも車道として設計された空間上に仮設の広場空間を設えた先進的な事例である。またこの仮設の広場空間は単なる短期間の社会実験に止まらず、長期に渡って設置され続けているという点でも先進的な事例である。
本稿では定点観察調査によって、滞留行為をできる限り詳細に把握・分類し、各滞留行為の分析を通して、都市の中心部における広場空間について考察し、報告するものである。
都市の中心部の広場空間では、周辺の飲食店舗ではそぐわないと思われる行為として、すぐに同伴者と合流するために数分待つ行為、子供連れで頻繁に座ったり立ったりする行為、スマートフォンで通話をする行為、大量の荷物を置く行為等、多様な行為があることが分かった。また、平日の「食事」行為をはじめとした1人での単独利用が多く見られる行為、休日の「待つ」行為をはじめとした家族連れなどのグループに多く見られられる行為等、平日と休日で異なった多様な行為があることも明らかとなった。
都市の中心部の広場空間は、個々の滞留者が居心地良く過ごしながらも、滞留者同士が互いの滞留行為を制限しない場であることが望まれる。そのため、都市の中心部の広場空間には、屋外の開放性を活かし、それぞれの広場空間の滞留者や空間特性、都市の特徴を踏まえて、平日・休日、曜日毎の利用者や構成人数、1人組の単独利用から多人数利用、多世代の利用に対して、即時的に対応可能なフレキシブルなデザインが求められる。
また、都市の中心部の広場空間での滞留行為は屋外で様々な人の目に触れることから、他の滞留者の行為を誘発することがある。そこには国内外から様々な人々が集うため、デザイナーをはじめとした専門家が予め想定していない、さらに多様な滞留行為が将来的に生まれる可能性もある。そのため、都市の中心部の広場空間は、時代を超えて長期的に対応可能なフレキシブルなデザインであり続けることも重要である。