(受付:2023.07.17, 採用:2023.09.05)
本稿は 20世紀の日本における主要な工業製品の色の変遷についての一連の研究の第五報である。「白物家電」を代表する製品である冷蔵庫について,戦前の製品がどのようなものであったか,戦後にも存続した主要メーカー3社(芝浦製作所,日立製作所,三菱電機)を主対象とし,メーカー社史に加え,メーカー機関誌や技術論文誌,業界誌の通読調査を行い,その他関連学会誌等を適宜参照した。その結果,従来「国産初の電気冷蔵庫」として「1930年製」とされてきた芝浦製作所の電気冷蔵庫初号機 SS-1200 が 1930(昭和 5)年に開発されたことを裏付ける同時代の資料は発見されず,1933(昭和8)年の発売と考えられること,芝浦製作所,日立製作所,三菱電機共に米国製品を参照して電気冷蔵庫の開発を行ったため,米国のデザインが輸入されたといえること,日本製の電気冷蔵庫は白く塗装された製品として始まり,その製品色は各社の二号機以降も戦前を通して不変であり,戦前には白い製品がほとんど作られていなかった洗濯機と対照的であることを明らかにした。