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論説/デザイン行政開始の経緯とその政策理念

デザイン行政開始の経緯とその政策理念

―日本のデザイン行政と振興活動の展開(その1)

青木史郎、黒田宏治、蘆澤雄亮、熊娜、余剣

Japanese Design Administration, Its Departure Process and Policy Philosophy
AOKI Shiro, KURODA Kohji, ASHIZAWA Yusuke, Xiomg Na, Yo Ken
(受付:2021/08/04 採用:2021/10/14)

要約

この論説は、通商産業省が体系的組織的にデザイン行政を開始した経緯を、その背景と意図に遡り考察することで、日本のデザインと産業の発展に行政が果たした役割を明らかにすることを目的とした。通商産業省は、1958年5月に通商局に「デザイン課」を設置、特許庁から「意匠奨励審議会」を移管し、12 月に答申を提出。翌59年には「輸出品デザイン法」を制定、日本貿易振興会は答申を受け, 年度末には「ジャパン・デザイン・ハウス」を開設した。通商産業省は、ほぼ2年という短期間に、中核組織、ビジョン、関連する法律、手足となる振興機関という、基本的な体制を整えた。このデザイン行政の出発については、これまで日本製品の摸倣問題への対応によるものと理解されてきた。しかし、盗用摸倣の対策と若干の予防策をもって、大きな権限を与えられる中央官庁の「課」が新たに設置されたとは考えにくい。盗用模倣問題という避けて通れない直近の課題を掲げつつ、むしろ「デザイン課」という名称(英文名は Industrial Design Section) が示すよう、戦略的な視点から「インダストリアルデザイン」の産業装備化を図るという、経済官庁らしい判断がなされていたと理解すべきである。そして、「デザイン課」の設置そのものが「デザインが大切である」との強烈なメッセージとなり、日本のデザインの本格的発展を導く大きな契機となったと思われる。



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Last-modified: 2021-10-18 (月) 10:55:13