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論文/中国における鋸・1

中国における鋸(一)

- 初期の鋸の発生と形態について

劉 淼

Chinese saws 1  LIU Miao
受理 2011/05/18、採用決定 2012/07/23【プロダクトデザイン】

要約

 中国における初期の鋸について、鋸の材質、歯形状、鋸外形状を調査し整理した。その結果以下のことが明らかになった。
1)新石器時代の鋸は、貝鋸、石鋸と骨鋸という3種類の材料が確認できた。その中の貝鋸が一番早く出現し、7千年前の新石器時代の初期に現れたことが確認できた。鋸歯の大きさ(荒さ)については石鋸が最も大きく、骨鋸、貝鋸の順で細かくなっていることが確認できた。
2)3種の材料の中では貝鋸が最も多く出土しているが、石鋸や骨鋸に比べて、形の上で大きな変化や発展などは少ないことが確認できた。仰韶文化時期に現れた石鋸と骨鋸は発掘数量は少ないものの、この2種類の鋸は形の上で大きな進歩がみられ、特に石鋸では打製から磨製による制作上の発展が確認できた。この研磨による歯づくりは、実に緻密なデザインと繊細な加工が施されていることが確認できた。磨製よりも打製による歯づくりの方が鋭角な歯で切断し、機能上においては優れているのではないかと推測できた。
3)発掘品の鋸歯については、摩耗により欠損しているものが多く確認できたことから、実用の道具として使用されたものと判断するに至った。
4)貝鋸の中には、押し使いような歯形をしているものと引き使いを連想させる歯づくりの両方が存在していることが確認できた。骨鋸についても明らかに引き使い用の歯づくりがなされている発掘品が確認できた。
 以上の理由から中国の初期の鋸については、圧倒的に往復運動を意識した二等辺三角形型の歯づくりである「押し引き使い」が多く存在し、出土数は少ないが、貝鋸と骨鋸の中に歯の向きに工夫を凝らして、「押し使い」「引き使い」のいずれの作業用の鋸も制作されていたことが確認できた。
5)外形状については材質の特性を生かして製作され、「三日月型」、「包丁型」、「スプーン型」、「矩形型」、「尖塔状型」の5種に分類整理できた。



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Last-modified: 2020-04-10 (金) 10:59:25