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古代ローマ住宅ペリスタイルの列柱についての研究

リングらの復元図のCGモデル化によるメナンドロスの家列柱における視覚的効果の検証

安田光男、木村博昭

Case study of the visual effect by columns of peristyle in the House of the Menander at Pompeii with 3D modelling in base of restoraration drawings by R. Ling and others
Teruo Yasuda, Hiroaki Kimura
(受付:2018/1/10、採用決定:2018/6/9) 【建築・環境デザイン】

要約

古代ローマ住宅はペリスタイルと呼ばれる中庭が紀元前2世紀ごろから富裕層を中心とする住宅の平面計画に導入され始め、ドムス住宅が形成された。ポンペイのメナンドロスの家もそういったドムス住宅の一つであるが、ペリスタイルを構成する列柱は等ピッチで整然と並ぶイメージとは異なり、一見ランダムに配置されているように見える。本論考では、メナンドロスの家をケーススタディとして、R.リングらの復元図から3Dモデルを作成し、検証・考察を通して、ペリスタイルの柱配置によって、どのような視覚的効果を用いて空間演出を行おうとしていたかを明らかにすることを目的とする。古代ローマ住宅には二つの軸線が存在することが、一般的に知られている。ファウセス(玄関)からペリスタイルへの視覚軸、もう一つはトリクリニウムからペリスタイルへの視覚軸である。メナンドロスの家においても、この二つの軸線に対応するペリスタイルの柱間の間隔は他の柱間より広げられており、軸線が強調されている。ファウセス(玄関)からペリスタイルを見る視覚軸はペリスタイル列柱の柱芯間隔について手前を広く、奥を狭くすることで、初源的な遠近法の効果で実際の距離よりも長く見えるように設えられていると考えられる。その視覚軸の終点に位置するオエクス前の列柱の中心と視覚軸にはズレが生じており、そのズレの要因は対称性と列柱の連続性の双方を維持するということを意図したためと考えられる。また、トリクリニウムからペリスタイルへの視覚軸について、ペリスタイルの東側から西側に向けて柱芯間隔を徐々に減じさせて、初源的な遠近法の効果で庭をより大きくみせるような空間演出を行っていると推測できる。ペリスタイル列柱の配置は主に北側及び東側に存在する饗宴用の部屋から庭へ向かう視線のためのウィンドーフレームとしての機能が色濃く、ペリスタイル西側及び南側の列柱に、その視線の先にある背景としての役割を担わせることで、劇場の舞台装置のような空間演出を行っていたと考えることができる。メナンドロスの家のペリスタイルの列柱は構造的な機能を超えて、柱芯間隔の巧みな操作や初源的な遠近法を用いた視覚操作を通して、空間演出に利用されていたことがわかった。



Last-modified: 2018-06-10 (日) 10:35:00 (133d)